1967年、イギリスのクーデター未遂事件のエピソード。
# 5 クーデター Coup あらすじ
女王が馬の調教を学ぶために海外に旅行する一方、ポンドの切り下げに対する英国エリート層の不満から、マウントバッテン卿はハロルド・ウィルソンを追い出す計画に加わる。
相関図
まとめ
膨大な貿易赤字
イギリスの貿易赤字は史上最悪の1億700万ポンドに達した。
マスコミは労働党、ウィルソン首相を非難、労働党寄りのデイリー・ミラーまでが批判記事を掲載する事態に。
労働党議員からは首相のマニフェストに反し防衛費削減を拒否し続けている国防参謀総長ルイス・マウントバッテン卿を解任するべきと声があがる。
ウィルソン首相はルイス・マウントバッテン卿に解任を言い渡す。
エリザベスと馬
馬を愛するエリザベス
時間が空けば厩舎に足繁く通うほどの馬を愛するエリザベス。
”クイーン・アレクサンドラ・ステークス”1番人気はエリザベスの所有馬アプレンティスだったが失速、負けてしまう。「最近王室の馬が勝てない」と言うエリザベスにポーチーは、「時代は変わって来てる。厩舎が時代遅れなんだろう。勝ちたいなら世界の最新技術を見て回るべきだ。フランスを視察してはどうか」と言い出す。
迷った末エリザベスは休暇を取り、公務を王太后に任せ、遠征旅に出る。
視察旅行
フランス、ノルマンディー、ケスネー牧場の視察で仔馬を育てるところから手掛けていることに感銘を受け、「もう変革するには遅いかしら」と言うエリザベスに、「人もやり方もすべて変えるべきだ。そしてなぜより良い競走馬がアメリカに流出するのか、その理由を調べるべきだ」とポーチー。迷った末エリザベスはポーチーと共にアメリカ、ケンタッキーを視察することに。
アメリカで最先端の厩舎を目にしたエリザベスはポーチーに”レーシングマネージャー”を引き受けて欲しいと言うが、「調教施設も回ってからでないと引き受けられない」と言われてしまう。そこでエリザベスは調教施設も視察することに。
ウィルソン首相の決断
ウィルソンはポンド引き下げを決断、テレビ放送で、「3年間、前政権の負の遺産と懸命に闘って来た。イギリスを最優先に考えた結果だ。ポンド切り下げて前を向く」と宣言した。
ルイス・マウントバッテン卿
デイリー・ミラー会長キングの接触
ルイス・マウントバッテンはビルマの戦友が一同に介した集いで演説するが、その会場にいたデイリー・ミラーの会長キングは、「今こそ国民を奮い立たせる英雄が必要です。あることを計画している」とマウントバッテンを昼食会に誘う。
昼食会の席でキング氏は、「イギリスを元の軌道に戻すためウィルソン首相を更迭し、非常事態政府を発足させる。あなたこそ首相にふさわしい」と言い出す。マウントバッテンは、「事実上のクーデターになる。聞かなかったことにする」と言うが、「今は平常時ではない。労働党は経済の主導権を握ろうと”ブルータス計画”を打ち出している。イングランド銀行の権限を取り上げ、外国政府のポンド残高を凍結し防衛費削減を強行しようとしている。自由と民主主義と資本主義への宣戦布告だ。銀行家と実業家と軍による革命だ。リーダーはあなたしかいない」と説得。マウントバッテンは、「非常に興味深い。48時間後にもう一度会合を」と言う。
マウントバッテンの出した答え
あらゆる資料を検証したマウントバッテンは再びキング氏たちと会合を持ったマウントバッテンは、クーデターが如何に難しいかを話した上で、「以上のことからイギリスでのクーデーターは成功の見込みがない」と。だが落胆するキング氏たちに、「ただし君主のもつ憲法上の力を味方につければ可能性はある。国会を解散させ新たな政府と首相を決定できる。陛下は軍の最高司令官でもある。軍が忠誠を誓うのは国会ではなく女王だ」と言う。キング氏は、「女王は同意しますか」と言うがマウントバッテンは、「説得材料はリストにした。私は女王の義理の叔父だ」と言う。
エリザベスの決断
すでに視察は1ヶ月になろうとしていた。
大好きな馬のことだけを考えポーチーと旅する日々に、「自分の競走馬を育てること、それが私の理想の生活だった。心からよろこびを感じてる。なのに私は別の責務を負ってしまった・・・。女王でない人生を考えてしまう。どんなに幸せだったか・・・」と本心を吐露するが・・・
そこへ秘書のマーティンが、「マウントバッテン卿から電話です」と伝える。エリザベスは、「かけ直す」と言うが、数分後またも、「お電話が・・・」と秘書。エリザベスは仕方なく電話に出るが、電話の相手はマウントバッテンではなくウィルソン首相だった。
ウィルソンは、「政府への反乱を企てる者がいると情報が入りました。王室の人間が反旗を翻そうとしている。マウントバッテン卿がデイリー・ミラーのキング会長と共謀し、政府を転覆させる気です。首相に就任して以来、精一杯陛下をお守りしてきたが、不本意ながら反君主制に味方せざるを得ない」と言う。エリザベスは、「私に任せて」と答えると返事するとポーチーに、「イギリスへ帰りましょう」と言う。その顔はもう女王に戻っていた。
エリザベスとマウントバッテン卿
イギリスに戻ったエリザベスはすぐさまマウントバッテンを呼び出す。
クーデターがリークされたと知らないマウントバッテンにエリザベスは、「クーデターは本当ですか?陰謀を策略するものと共謀しても解決しない」と言うが、「解決の糸口です。なぜウィルソンを庇うんですか」とマウントバッテン。エリザベスは、「私が守っているのは首相。私は憲法を守り民主主義を守る」と言い切る。
マウントバッテンは、「政権を握る男が民主主義を壊そうとしているのに何もせずに見ているのですか」と言うが、「何もせず待つのが私たちの仕事。首相に問題があるなら国民が彼の再選を阻止する。何もせずに待つことは難しい。あなたは生まれながらの指導者、役割と責務を失い無力感に襲われたのでしょう。でも王室の中ではまだ大きな役目がある。夫には父親代わりで私に助言をくれる叔父であり指導者、未来の国王チャールズにとっては模範、そして私の義母の弟です。最後に顔を見せたのはいつ?きっとさみしがってる。クーデターを企てるより役目を果たすよう務めることの方が重要です」と言い切る。
姉と弟
エリザベスの言葉にルイスは姉アリスを見舞う。
弟の来訪に、「来てくれたのね」と笑顔を見せたアリスは、「王宮にいればどんな噂も耳に入る。女王に叱られたか」と言う。(アリスは弟がクーデターを起こそうとしていたことを知っていた)
仕方なくルイスは、「あぁそうだ。だがこの国は大変な状況にある」と言うが、「この歳になれば国がどうなろうと関係ない。私たちの国でもない。バッテンベルグ家に国なんてものはない。親族に王や女王がいたかもしれないけど私たちは雑種。干渉するべきじゃない」と言うが、「それでもここは私の国だ。家をくれて名前をくれた。だから私はこの国に人生を捧げた。だからこそイギリスの現状に耐えられない」と言う。そんな弟の手を握る姉。
ヨーロッパの王族であるバッテンベルグ家。アリスとルイスはヴィクトリア女王のひ孫。
イギリス海軍将校からキャリアをスタート。第二次世界大戦後、連合国軍東南アジア戦域最高司令官として戦後処理で活躍、インド/パキスタンを分離独立にも貢献した偉大な英雄
(ビルマで日本兵と激戦、以後、日本を嫌っていた)
エリザベスとフィリップ
1ヶ月ぶりにバッキンガムに戻って来たエリザベスに、「随分長い旅だったな」と言うフィリップにエリザベスは、「競走馬の実態調査に行っただけ、勉強になった」と言うが、「ポーチーをレーシングマネージャーにするのか?ずっと一緒だな」とフィリップ。フィリップはポーチーにジェラシーを感じているのだ。フィリップはエリザベスにキスするのだった。
感想
女王になりたくてなったわけじゃないエリザベス。私は常々、自らやりたいことをするために行動することよりも、与えられた役目を忠実に、そして期待以上の結果を出す人を尊敬しています。私が決してできないことなので。
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